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難治骨折
グループ
について

私たちは、骨折が治らずお困りの患者さんを専門的に治療しています。骨折は通常、受傷してから3ヶ月~半年位までに骨がくっついて治ります。
しかし、全骨折のうち約5%は、治療をしたにもかかわらず治らないと報告されています。このように骨折が治らない状態は、「偽関節」「遷延治癒」あるいは「難治骨折」と呼ばれます。
また、骨折の手術をしたところに細菌が感染して骨髄炎を起こし、その結果、骨がくっつかないという場合もあり、感染性偽関節と呼ばれます。これらの治りにくい骨折、「難治骨折」の治療には専門的な知識が求められ、通常の骨折治療の経験が豊富な医師でも対応がなかなか難しい場合も多くあります。
私たちは、これまでに数多くの難治骨折の治療に携わってきており、専門的な知識・最先端の治療戦略を持っています。また、難治骨折を確実に、より早く治すために、次世代の骨折治療につながる骨再生医療の研究をこれまでに行ってきました。
骨折が治らずお困りの患者さんは、昭和大学病院附属東病院整形外科「難治骨折診」を受診して下さい。

難治骨折診

かかりつけ医の紹介状(診療情報提供書)や、これまでに検査された画像(レントゲンやMRI、CTなど)をお持ちいただけますと、初診時により多くのご説明・治療方針の検討が可能となります。また、当院で治療を開始するまでの治療歴が大変重要で、どんな治療法が最適かの判断材料となります。
診療は予約制で行っております。下記の当院医療連携室のお電話にてご予約ください。

対応可能な病態

  • 01骨折後なかなか骨がくっつかない偽関節、遷延治癒
  • 02骨折など外傷後の感染症、骨髄炎
  • 03これら両者を合併した感染性偽関節
  • 04骨折が変な形でくっついてしまい、機能障害の原因となっている変形治癒
  • 05外傷などが原因で骨がなくなって脚が短縮し、歩行障害をきたしている状態
代表的な治療の対応可能な病態 のレントゲン画像

主に、四肢(腕、脚)の大きな骨でのこのような病態を対象にしています。
大腿骨、脛骨、上腕骨、前腕骨、鎖骨などです。手首・手の難治骨折も扱いますが、種類によっては、手外科・上肢グループの医師へ紹介する場合もあります。

私たちが実施している骨折治癒促進療法

骨折すると痛みに苦しめられ、手や足を自由に動かせなくなります。
骨が治らなければ、これらの症状がずっと続いてしまいます。骨折の標準的な治療は、手術で骨のずれを直し、固定することが原則(AO法)で、われわれもこれらを治療の基本としています。
私たちは、今ある最良の治療を患者さんに提供するとともに、さらに優れた治療法の確立を試みています。私たちが実施している4つの骨折治癒促進療法をご紹介します。
下記に挙げる1は国内外の学会で高く評価され学会賞を獲得しており(上記参照)、動物実験にとどまらず、既に臨床で実際の患者さんの治療へと応用しているものです。
また、2~4に関しては、これまでに数多くの患者さんへ使用している実績があります。

01.骨折に対する炭酸ガス療法

私たちは、新開発の炭酸ガス経皮吸収システムを用いた「炭酸ガス経皮吸収療法」の臨床研究をネオケミア社(神戸市)との共同研究として行っています。
神戸大学大学院整形外科とも連携して研究を行っています。
これまでに、炭酸ガス経皮吸収療法の動物実験および患者さんを対象とした臨床研究を行ってきました。

この炭酸ガス経皮吸収療法は、炭酸ガスを腕や脚に吸収させることにより、骨折部周囲の血流・血行がよくなる作用をもたらしたり、筋疲労・筋力低下・筋肉痛がよくなったり、骨折が早く確実に治ったりすることを証明してきました。
また、下肢難治性骨折の患者さんに対して炭酸ガス経皮吸収療法を行い、骨折の治りが早くなるとともに関節の動きもよくなることが明らかとなりました。

この治療法は、炭酸ガスを効率よく経皮吸収するように開発された特殊なハイドロゲルを皮膚に塗り、腕や脚をプラスチック製アダプターで覆い、炭酸ガスをその中に送気して、腕や脚に経皮吸収させるという非常にシンプルで痛みのないものです(右図)(下図)
動物実験でもヒトでも安全性に大きな問題はないことも確認されています。

炭酸ガス療法の画像

当科では「炭酸ガス療法」を、手首や肘を骨折した患者さんの治療に応用する臨床研究を開始しています(「炭酸ガス経皮吸収療法による上肢手術後の機能回復促進効果の検証」)。
昭和大学医学部 人を対象とする研究等に関する倫理委員会において実施の承認を受け、医学部長の許可のもと行っています。
手首や肘の骨折を骨折した患者さんを対象としたこの新しい治療法は、現在、世界で昭和大学整形外科だけで行えるものです。

この炭酸ガス経皮吸収療法が上肢の整形外科手術後において、血流増加作用・組織修復作用を介して筋力・関節可動域・疼痛を改善させ、機能回復効果をもたらすことが期待されます。
将来的には、骨折を早く、より確実に治すといった用途の標準的な骨折治癒促進法となり、世の中に広げていくことを視野に入れています。

「炭酸ガス経皮吸収療法」の対象となる患者さん
炭酸ガス経皮吸収療法の画像

昭和大学病院に入院され、橈骨遠位端骨折もしくは肘頭骨折に対する手術治療を受ける患者さんが対象になります。
手術を行った後に、炭酸ガス経皮吸収療法を入院中および外来にて週2回・1回あたり20分間、計8回行い、その後の機能回復を評価します。
くわしくは、患者さんへの説明書を参照ください。

炭酸ガス経皮吸収療法の画像

02.RIA (Reamer Irrigator Aspirator) systemを用いた新しい骨移植法

交通事故などの重症な骨折では大きな骨の欠損が生じる場合があり、また、難治性骨折・感染性偽関節(長期間にわたり骨折の治癒が認められない状態)でも、大きな骨欠損が生じる場合があります。一方、骨髄炎でも、感染した骨を切除する手術を行った結果、大きな骨欠損が生じてしまう場合があります。
このような大きな骨欠損に対しては、患者さんの骨盤から骨を採ってきて、欠損部に移植する自家骨移植術が通常行われます。

しかし、採れる骨の量に限界があるため、量が足りなくなり治らないケースが少なくありませんでした。
その場合には、創外固定を長期間装着して行う骨延長術・骨移動術や、血管柄付き骨移植といって脚を大きく切開し、骨と血管を採りだして移植するといった大がかりで難易度の高い治療しかこれまでにはありませんでした。

RIA systemは、患者さんの健常な大腿骨の髄腔の内側から大量に骨を採取することを可能とした新しい手術器具です。欧米では2005年から使用が開始され、日本では2013年4月より使用が開始されました。
この新しい手術器具を利用することで大量の移植用の骨を確保することが可能となり、大きな骨欠損における骨移植術の治療成績が大きく改善されたことが報告されています。
我々はこれまでに、大きな骨欠損を伴う難治性骨折や骨髄炎に対して数多く使用しており、良好な治療成績を収めています。また、次項3で説明するMasquelet法と併せて行うことも可能です。

RIA (Reamer Irrigator Aspirator) systemを用いた新しい骨移植法の画像

03.Masquelet法(マスケレ法):骨欠損に対する新しい骨再生療法

Masquelet法(マスケレ法)はフランスの整形外科医Masquelet教授が2000年に報告した、骨欠損に対する画期的な骨再建法です。
Masquelet法(マスケレ法)は、外傷や骨髄炎にて生じた骨欠損に対し、骨欠損部に骨セメントを詰めて、セメントの周囲に特殊な膜(induced membrane)を形成させ、6週間以上経過した後に詰めたセメントを除去し、形成された膜の内部に骨を移植することで、骨欠損部の骨が早く再生されるという方法です。
優れた骨再生療法として近年、世界中で注目されており、日本でも2013年以降学会でその優れた治療成績が報告され始めている最新の治療法です。最大で20cmもの巨大骨欠損でも骨再生させることが可能であったとの報告もあります。
我々もこのMasquelet法(マスケレ法)に着目し、これまでに外傷や骨髄炎にて生じた骨欠損の患者さんに対して本法を積極的に使用し、これまでに良好な成績を収めています。
大きな骨欠損に対して治療する場合は、骨盤から自分の骨を採ってきても移植するにも量が不十分なことがあり、その場合には2.で挙げたRIA systemを併用したMasquelet法を行い、骨再生を成功させています。

マスケレ法による骨再生療法の画像
マスケレ法による骨再生療法の画像

04.超音波骨折治療

現在、保険適応のある確立された骨折治癒促進法として、日本で最もよく使われている治療法です。
当院では本法を積極的に使用しており、実施症例数・治療実績が豊富で、学会で優れた治療成績を報告しています。
また、超音波骨折治療に関する基礎研究も数多く行っており、エビデンスを積み重ねてきました。
難治骨折の場合、適応があれば手術を行わずに超音波骨折治療のみを行い、その結果、手術を回避できることもあります。
また、難治骨折の手術を行った患者さんでも、より早く確実に治るよう、手術後に超音波骨折治療を行うこともあります。

超音波骨折治療の画像

スタッフ紹介

李先生の写真

昭和大学横浜市北部病院 講師

李 相亮

専門分野
外傷、難治骨折、骨再生医療
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本再生医療学会再生医療認定医、日本骨粗鬆症学会認定医、身体障害者福祉法指定医、難病指定医
紹介
骨折手術法に精通しており、髄内釘、プレート、スクリューなどを用いた内固定手術に加え、イリザロフ創外固定、Taylor Spatial Frameなど特殊な創外固定を用いた手術も行っています。
骨延長術、偽関節手術、骨移植術などの特殊な手術も行っています。
また、これまでに、骨折治癒を促進させるための基礎研究・臨床研究に長年携わってきました。
経歴
平成12年:神戸大学医学部医学科卒業
平成19年:神戸大学大学院医学研究科整形外科学修了 医学博士号取得
平成18年~20年:米国・UC Davis Medical Center整形外科 研究員
平成22年~29年:神戸大学医学部附属病院 整形外科 助教
平成25年5月~6月:ドイツ・フライブルク大学附病院整形外科・外傷外科 AO Trauma fellowship
平成29年4月~令和元年9月:昭和大学医学部整形外科学講座 講師
令和元年10月~:昭和大学横浜市北部病院整形外科 講師
各種委員
日本骨折治療学会 評議員、AO Trauma上級会員、Journal of Orthopedic Science, editorial board member
学会賞
2019年:第20回ヨーロッパ整形外科学会(EFORT)にて「iPS細胞を用いた骨再生」の基礎研究で学会賞受賞(Jacques Duparc Awards)および「下肢骨折手術後の深部脈血栓症」に関する臨床研究でbest poster presentation賞受賞。
2018年:第16回国際骨折治療学会(ORS ISFR 2018)にて「骨折に対する炭酸ガス療法」の臨床研究で学会賞受賞
2017年:第43回日本骨折治療学会にて「骨折に対する炭酸ガス療法」の臨床研究で学会賞受賞
2013年:第15回ヨーロッパ救急外傷外科学会にて「偽関節に対する自家末梢血CD34陽性細胞移植」の臨床研究で学会賞受賞
2013年:第39回日本骨折治療学会にて、「骨折に対する炭酸ガス療法」に関する基礎研究で学会賞受賞
2012年:第38回日本骨折治療学会にて「超音波骨折治療」に関する基礎研究で学会賞受賞

代表的な業績

  • 01.

    Kumabe Y, Lee SY, Waki T, et al. Triweekly administration of parathyroid hormone (1-34) accelerates bone healing in a rat refractory fracture model. BMC Musculoskelet Disord. 2017

  • 02.

    Lee SY, Niikura T, Iwakura T, et al. Thrombin-antithrombin III complex tests: A useful screening tool for postoperative venous thromboembolism in lower limb and pelvic fractures. J Orthop Surg (Hong Kong). 2017el. BMC Musculoskelet Disord. 2017

  • 03.

    Arakura M, Lee SY, Takahara S, et al. Altered expression of SDF-1 and CXCR4 during fracture healing in diabetes mellitus. Int Orthop. 2017

  • 04.

    Lee SY, Niikura T, Iwakura T, et al. Treatment of ununited femoral neck fractures in young adults using low-intensity pulsed ultrasound: Report of 2 cases. Int J Surg Case Rep. 2016

  • 05.

    Dogaki Y, Lee SY, Niikura T, et al. Effects of parathyroid hormone 1-34 on osteogenic and chondrogenic differentiation of human fracture haematoma-derived cells in vitro. J Tissue Eng Regen Med. 2016

  • 06.

    Waki T, Lee SY, Niikura T, et al. Profiling microRNA expression during fracture healing. BMC Musculoskelet Disord. 2016

  • 07.

    Waki T, Lee SY, Niikura T, et al. Profiling microRNA expression in fracture nonunions: Potential role of microRNAs in nonunion formation studied in a rat model. Bone Joint J. 2015

  • 08.

    Okumachi E, Lee SY, Niikura T, et al. Comparative analysis of rat mesenchymal stem cells derived from slow and fast skeletal muscle in vitro. Int Orthop. 2015

  • 09.

    Lee SY, Niikura T, Iwakura T, et al. Complete traumatic backout of the blade of proximal femoral nail antirotation: a case report. Orthop Traumatol Surg Res. 2014

  • 10.

    Lee SY, Niikura T, Iwakura T, et al. Traumatic subchondral fracture of the femoral head in a healed trochanteric fracture. BMJ Case Rep. 2014

  • 11.

    Lee SY, Niikura T, Iwakura T, et al. Bicondylar Hoffa fracture successfully treated with headless compression screws. Case Rep Orthop. 2014

  • 12.

    Iwakura T, Lee SY, Niikura T, et al. Gentamycin-impregnated calcium phosphate cement for calcaneal osteomyelitis: a case report. J Orthop Surg (Hong Kong). 2014

  • 13.

    Dogaki Y, Lee SY, Niikura T, et al. Efficient derivation of osteoprogenitor cells from induced pluripotent stem cells for bone regeneration. Int Orthop. 2014

  • 14.

    Lee SY, Koh A, Niikura T, et al. Low-intensity pulsed ultrasound enhances BMP-7-induced osteogenic differentiation of human fracture hematoma-derived progenitor cells in vitro. J Orthop Trauma. 2013

  • 15.

    Lee SY, Niikura T, Sakai Y, et al. Sacral fracture nonunion treated by bone grafting through a posterior approach. Case Rep Orthop. 2013

  • 16.

    Iwakura T, Lee SY, Miwa M, et al. Analysis of circulating mesenchymal progenitor cells in arterial and venous blood after fracture. J Tissue Eng Regen Med. 2013