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手外科・肘関節外科
グループ
について

手外科・肘関節外科グループ医師の集合写真

手外科・肘関節外科グループは、手・指・手首・前腕・肘・上腕・うで 上肢すべてのケガ、痛み、しびれ、感覚異常、使いづらさ、麻痺、変形を扱います。
手は身体の中では小さな運動器ですが、「運動」「感覚」「コミュニケーション」など多くの機能を持ち脳と密接に関連する特殊な器官です。手に障害をきたすと日常生活や仕事、趣味などに大きな支障となります。したがって手に外科的処置を行う場合、他部位とは異なる心構えと考え方、技術が必要となります。手術操作ではきわめて繊細で正確、かつ愛護的な(Atraumatic)対応が要求されます。
手外科専門医には細かな配慮、高度の技術と忍耐力、優れた成績への洞察力が必要です(津下健哉 著「手の外科の実際」改訂第6版から一部改変)。
緻密で複雑な構造を持つ手・上肢の治療には、高度な技術と豊富な知識・経験、それらを総括して上肢全体の機能を再建・創造する計画性と芸術性が必要です。昭和大学の手外科・肘関節外科グループは、日本手外科学会認定研修施設であり、日本手外科学会認定専門医および手外科研修医で一丸となってチーム医療を行っています。
先代の教授であられる稲垣は、日本手外科学会学術集会、日本肘関節学会学術集会の会長を歴任し、日本肘関節学会では理事長を務めました。その専門的な治療を現在も引き継いでおります。

90年の歴史と伝統を基盤とし、特に力を入れて患者様に提供している内容をご紹介いたします。

01橈骨遠位端骨折

先代の教授であられる藤巻、川島らが日本で初めてまとまった報告を行い、その後も継続して数多くの発表・論文掲載の実績がございます。特に、ゴールドスタンダードの治療法となった各種掌側ロッキングプレートを使用し、早期社会復帰に役立てております。掌側ロッキングプレート固定法では、スクリューの固定角度にある程度の自由度があるVariable(Polyaxial) locking plateを用いて、DSS (Double tiered subchondral support) 法という手術手技にいち早く注目し、手術・研究ともに最先端の内容を行なっています。
日本橈骨遠位端骨折ガイドライン策定委員会に川崎(H1卒)が任命され、国民の皆様の治療の礎となる仕事を行っています。

02小児の肘周辺骨折

小児骨折は、成長と共に変形と機能障害を生じやすい骨折です。当科では上腕骨顆上骨折1000例、上腕骨外顆骨折400例の実績があり、豊富なデータがございます。
頻度の最も高い上腕骨顆上骨折では、フォルクマン拘縮など合併症リスクが高く、骨折部の転位(ずれ)が著しい場合におは受傷日当日に緊急手術で骨折部を整復し、鋼線刺入固定術を行うことを原則としております。

03内反肘変形

前述の小児の上腕骨顆上骨折の受傷後では、成長とともに肘の内反変形を生じる場合があります。当科では、1973年から故 藤巻 悦夫 名誉教授が発案した3次元矯正骨切り術の伝統を継承しております。
日本で最も早くから行なわれたため症例数も全国屈指であり、成績も良好のため、現在でも基本術式を変更せずに藤巻 教授の術式を継承しております。
手術時間は1時間程度で出血量は少なく、2泊3日程度でのご退院が可能です。
また、成人の内反変形に対しては、double plateを使用した矯正骨切り術を行っており、全国から患者様がご来院されます。

04舟状骨骨折 及び 舟状骨偽関節

舟状骨骨折の新鮮(受傷直後)例、あるいは遷延治癒(治癒に時間がかかった場合)では、骨折部の治癒のために圧迫力を加える目的で、小さい傷でスクリューを挿入し固定する方法を行いいます。
しかし、本骨折は非常に見逃されやすく、偽関節(骨折が治らない状態)に陥りやすい骨折です。
偽関節の中でも難治例(骨壊死が疑われるもの、舟状骨の近位部での骨折、経過の長いもの、過去の手術がうまくいかなかった例)に対して、当科では血管柄付き骨移植術を100例以上行い、難治性にもかかわらず骨癒合率90%という非常に良好な成績をおさめています。
転位(ずれ)や変形のない偽関節、早期復帰を望むスポーツ選手では、関節鏡視下に偽関節部を掻把(クリーニング)し、自家海綿骨移植術とスクリュー固定を併用することで早期復帰に寄与しており、治療成績も良好です。

05キーンベック病

キーンベック病(月状骨無腐性壊死)の治療では、StageⅢAまでには橈骨の短縮骨切り術、または血管柄付き骨移植術を行います。StageⅢB以上には月状骨全摘出と腱球移植術を行います。手根骨の不安定症に対しても様々な治療法があり、当科ではキーンベック病以外の手根骨の異常に対して、全て対応しております。

06TFCC損傷

手関節の尺側部痛の原因となることの多い三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷には、新妻、富田、池田を中心に関節鏡視下TFCC縫合術を行っています。
スポーツ選手の受傷が多いですが、日常生活でもお困りの方が大変多く、痛みや手関節の不安定が消失するため日常生活や仕事に復帰が可能となることから、大変喜ばれております。

07肘関節鏡視下手術

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、離断性骨軟骨炎(野球肘)、肘関節の拘縮(硬さ)、肘関節の変形、肘関節滑膜炎などの手術は、渡邉、富田、西中を中心に関節鏡視下手術を行います。各医師はプロのスポーツ整形外科に精通しておりますので、スポーツへの早期復帰が可能であり、術後の疼痛も少ないのが特徴です。また、プロ以外のアマチュアの方も対応いたします。

08テニス肘、ゴルフ肘

難治性のテニス肘、ゴルフ肘は、靭帯を一度骨からはがし、傷んだ瘢痕組織をクリーニングして、上腕骨の突出を削ったうえで靭帯を少し緩めるようにして再度縫合する方法を行っています。ステロイド注射や超音波、衝撃波で改善しなかった症状が改善し、非常に良好な成績をおさめています。

09人工肘関節置換術、人工指節関節置換術

関節リウマチの薬物治療は急速に進歩し、同時に外科的な手法も進歩しました。特に近年では上肢の人工関節の割合が増え、人工肘関節は手術適応が少ないにもかかわらず手術数は累計180例を超えます。
先代の教授であられる稲垣が米国Mayo clinicで得た研究データ、手術見学で得た知識と技術を生かし、当院でも良好な成績が得られており、その手術には海外や他大学からの見学者も多く、また患者様は全国各地からご紹介いただきご来院されております。人工肘関節置換術に関しては、非連結型のKudo型と、連結型のMayo型を患者様に合わせて選択しています。また、肘以外にも手指の変形(へバーデン結節、ブシャール結節)や、関節リウマチによる手指に対して人工指関節置換術を行っております。関節リウマチにはシリコン製の人工関節を、変形性の指関節症には表面置換型の人工関節置換術とシリコン製の人工関節のいずれかを使用します。

10関節リウマチによる手関節・指関節の変形

関節リウマチによる手関節炎では伸筋腱の断裂を来すことが多いので、腱移行術や腱移植術と併用して、Sauve-Kapandji法やDarrah法、部分橈骨手根関節固定術などを患者様に応じて行います。
手指の尺側偏位変形に対しては、手指のMP関節をシリコン製の人工関節置換術に変え、伸筋腱のバランスを調整します。

11上腕骨遠位顆部骨折、肘頭骨折

高齢者に多い上腕骨顆部の通顆骨折や、青壮年者に多い上腕骨の関節内粉砕骨折には、Mayo double plateを使用して内側・外側の両側を固定する方法を行っています。場合によっては橈骨遠位端骨折と同様に多軸性ロッキングスクリューとプレートを上腕骨遠位に使用することもあります。
高齢者の上腕骨顆部骨折では、手術時間が長く、手術侵襲も大きいこと、また術後に骨折部が偽関節となる場合がございますので、年齢の適応はありますが近年では一期的に(はじめから)人工肘関節置換術を行う場合もあります。

12神経のけが、絞扼性(神経の通り道が狭くなる)障害

腕神経叢損傷の治療のパイオニアであられる原 徹也顧問のもと、当科では末梢神経診を中川 種史 客員教授(中川整形外科)、川野 健一 客員教授(東京都立広尾病院 整形外科 部長)が担当し、難治症例の診断と治療に当たっています。
外傷による神経断裂には新妻を中心に顕微鏡下に神経縫合術や神経移植術、適応があれば人工神経移植術を行います。症例の多い手根管症候群や肘部管症候群では、安全を第一に直視下(目で見て神経を確認しながら)に神経剥離術や神経移行術を行っています。また、他院での術後再発例にも対応しております。神経麻痺に伴う上肢の機能障害には、腱移行術などの上肢機能再建術も行っています。

13切断指の再接着、腱・神経・血管の縫合、皮弁形成術

当院の救急センターへ搬送される手指の切断や、神経・腱・血管の断裂、開放骨折に対し、新妻を中心に顕微鏡視下に切断指再接着、神経・腱・血管の縫合を行います。
皮膚欠損に対してはVAC systemによる陰圧密封療法で初期治療を行い、後日有茎皮弁や遊離皮弁による複合組織移植術で可能な限り対応しています。

14母指CM関節症

母指CM関節症では、まず装具を作成しリハビリテーションを行います。改善がなければ、70歳以上の方には大菱形骨の一部を切除し、人工靭帯を用いてサスペンションのように中手骨を引き上げる関節形成術を行っています。大菱形骨を残しているため、万が一再発した場合でも関節固定術が行えるように工夫しています。70歳未満で力を必要とする作業が多い方には、上記に加えて靭帯の一部を中手骨の骨孔に通して制動することで、Hybrid法として再発のないよう心がけています。適応があれば中手骨骨切り術や、関節固定術を選択することもあります。当科では、様々な方法での対応が可能であり、患者様のニーズに合わせたテーラーメード医療を行っております。

15エコー(超音波)

エコーは外来診療における運動器の評価、神経ブロック、注射治療など、整形外科領域では非常に幅広く使用されています。麻酔科とも連携し勉強会を開くなど、手外科・肘関節外科グループは上肢の麻酔法に長けております。

16リハビリテーション

整形外科、特に手外科・肘関節外科の治療は、手術のみではなく術後のリハビリテーションが非常に重要です。当院には手外科・肘関節外科に精通した作業療法士(ハンドセラピスト)の先生方がおります。術前より作業療法士が係わり、術後より早期にリハビリテーション治療を開始します。外来リハビリテーション治療も行っており、土曜日も対応しております。

スタッフ紹介

筒井先生の写真

講師

筒井 完明

専門分野
肘関節外科・手外科、重症四肢外傷、マイクロサージェリー
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会専門医
諸星先生の写真

助教

諸星 明湖

専門分野
手外科
資格
日本整形外科学会整形外科専門医
川崎先生の写真

昭和大学横浜市北部病院教授

川崎 恵吉

専門分野
手外科、外傷
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター
久保先生の写真

昭和大学江東豊洲病院講師

久保 和俊

専門分野
整形外科一般、手外科
資格
日本整形外科学会整形外科専門医
稲垣先生の写真

昭和大学客員教授

稲垣 克記

専門分野
手外科・肘関節外科、運動器
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医日本リウマチ学会リウマチ専門医、日本手外科学会専門医、身体障害者福祉法第15条第1項指定医、難病指定医、臨床研修指導医
富田先生の写真

客員教授

富田 一誠

専門分野
スポーツ、手外科・肘関節外科
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日整会認定スポーツ、日整会認定リウマチ医、日整会認定運動器リハビリテーション医、日本手外科学会認定手外科専門医、日本体育協会スポーツドクター、義肢装具等適合判定医師、身体障害者福祉法第15条第1項指定医
平原先生の写真

兼任講師

平原 博庸

専門分野
手外科・肘関節外科、末梢神経損傷
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本リウマチ学会リウマチ専門医、義肢装具等適合判定医師、身体障害者福祉法第15条第1項指定医
池田先生の写真

兼任講師

池田 純

専門分野
手外科
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リウマチ医義肢装具等適合判定医師、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本手外科学会専門医
前田先生の写真

兼任講師/医学博士

前田 利雄

専門分野
手外科、外傷
資格
日本整形外科学会整形外科専門医
新妻先生の写真

Mayo Clinicへ留学中

新妻 学

専門分野
手外科・肘関節外科、マイクロサージャリー、機能再建外科、上肢の人工関節、末梢神経外科、切断指再接着
資格
日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会専門医、日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会研修指導者、臨床研修指導医(厚生労働省)、義肢装具等適合判定医師、難病指定医、身体障害者福祉法第15条第1項指定医

代表的な業績

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  • Niitsuma G., et al. Digital arterial occlusion at the metacarpophalangeal joint with hypothenar hammer syndrome-like symptom: A case report. J Orthop Case Rep. 12(12); 1-5, 2022

  • Niitsuma G., et al., Metaphyseal–diaphyseal junctional fractures of the distal humerus in children: Two case series. J Orthop Case Rep. 2022;12(3):43-47.

  • Kuroda T., et al., Wide-awake approach for flexor digitorum superficialis tendon transfer followed by early active mobilization. Indian J. Plast. Surg, 54:3, 338-343, 2021.

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  • Niitsuma G., et al., Extensive high-pressure injection injury of the hand due to epoxy resin paint: a case report. Case Reports in Plastic Surgery and Hand Surgery, 8:1, 56-62, 2021.

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  • Kawasaki K, Nemoto T, Inagaki K, et al. Variable-angle locking plate with or without double-tiered subchondral support procedure in the treatment of intra-articular distal radius fracture. J Orthop Traumatol. 2014

  • Inagaki K Current concepts of elbow-joint disorders and their treatment. J Orthop Sci. 2013

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  • Tomita K, Berger EJ, Berger RA, et al. Distribution of nerve endings in the human dorsal radiocarpal ligament. J Hand Surg Am. 2007

  • Takigawa S, Meletiou S, Sauerbier M, et al. Long-term assessment of Swanson implant arthroplasty in the proximal interphalangeal joint of the hand. J Hand Surg Am. 2004

  • Hirahara H, Neale PG, Lin YT, et al. Kinematic and torque-related effects of dorsally angulated distal radius fractures and the distal radial ulnar joint. J Hand Surg Am. 2003

  • Inagaki K, O'Driscoll SW, Neale PG, et al. Importance of a radial head component in Sorbie unlinked total elbow arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2002