専門診

手の外科診

手の外科センター

 手は身体の中では小さな運動器ですが、「運動」「感覚」「コミュニケーション」など多くの機能を持ち脳と密接に関連する特殊な器官です。そのため、手に障害をきたすと日常生活や仕事、趣味などに大きな支障となります。したがってわれわれが手に外科的処置を加える場合には多部位とは異なる心構えと考え方、技術操作が必要となります。すなわち、操作がきわめて繊細でしかも正確でなければならず、操作には極度のAtraumaticということが要求されます。以上を行なうために、医師には細かい神経と高度の技術と忍耐力、そして優れた成績への洞察力が要求されます(津下健哉 著「手の外科の実際」改訂第6版から一部改変)。このように緻密で複雑な構造を持つ手の治療には、高度な技術と豊富な知識・経験およびこれらを総括して手全体としての機能を再建し創造する計画性と芸術性が必要となりますが、当センターは日本手外科学会認定研修施設であり、以下の手外科専門医8名を含む多くの医師でチーム医療を行っています。

担当医師:

手外科専門医

瀧川宗一郎(S52卒:客員教授、菊名記念病院整形外科統括部長)
稲垣克記(S59卒:昭和大学医学部整形外科主任教授)
平原博庸(H1卒:目蒲病院院長)
川崎恵吉(H3卒:昭和大学医学部整形外科講師)
富田一誠(H6卒:昭和大学江東豊洲病院整形外科准教授)
池田純(H9卒:昭和大学横浜市北部病院整形外科講師)
上野幸夫(H7卒:太田西の内病院整形外科)
前田利雄H7卒:昭和大学医学部整形外科講師)

 平成19年より始まった手外科専門医制度に伴い、昭和大学病院(東京都品川区)、昭和大学横浜市北部病院(神奈川県横浜市都筑区)、昭和大学江東豊洲病院(東京都江東区)、太田西ノ内病院(福島県郡山市)が手外科専門病院に認定され、これらの病院が連携しながら、外来、手術、研究活動を行っています。チームワークをモットーに、多くの症例を全員で共有しながら治療にあたっています。特に人工肘関節置換術、舟状骨偽関節に対する血管柄付き骨移植術や鏡視下手術、TFCC損傷に対する鏡視下手術、舟状月状骨間靱帯損傷、遊離複合組織移植術、などの難易度の高い手術では、これらの専門病院に数人の専門医が集結して、チームを組み一緒に手術を行っています。

 東京都品川区旗の台の手の外来には、稲垣(火曜一診)、川崎(木曜手外科専門診)、前田(木曜手外科専門診)の他、大学院生の医師、また福島医師(S62卒:菊名記念病院)や平原医師、池田医師の手助けがあり、手術には、肘関節鏡手術では渡邉教授(S62卒)、リウマチ手手術には豊島医師(H13卒)もチームに加わり執刀しています。

 これまで、米国Mayo clinicに1997年から、稲垣−瀧川−平原−富田−池田医師が留学し、今年の4月からは久保助教(H15卒)の留学も決まっております。さらに昨年、IBRA財団の協力のもと、川崎が1年間ヨーロッパ(スイス−ドイツ−オーストリア)の手外科専門病院に留学し、現在は久保医師が引き継いで留学中であります。国際学会への参加も多く、アメリカ手外科学会(ASSH)やヨーロッパ手外科学会(FESSH)に、若手医師の発表が相次ぎ(一昨年のパリ、昨年のミラノのFESSHには6~7演題ずつの発表)、世界各地で羽ばたいています。日本で行うのは難しいcadaver seminarにも参加し、実践的な手術のトレーニングにも励んでいます。手外科医師を目指す若手医師への教育も盛んで、新潟手外科研究所と熊本機能病院手外科センターへの研修も始まりました。また、大学院生による研究も活発で、人工肘関節、上腕骨顆部骨折のプレート、肘頭骨折のプレート、橈骨遠位端骨折のプレートなどの力学的試験などに、多くの時間が研究にも費やされ臨床に応用されています。稲垣克記は平成29年に第29回日本肘関節学会及び、平成30年に第61回日本手外科学会学術集会(東京)の会長予定で現在両学会の理事を務めており、また多くの国際学会のメンバーであり、英文一流誌の査読と審査にも関わっております。昨年度はハーバード大学とスイスの手外科准教授、教授が手術の見学に来院されました。

 我々が90年の歴史と伝統を基盤とし最高の技術と自負し研究を含め、特に力を入れて患者様に日々提供していることをご紹介いたします。

1. 橈骨遠位端骨折

日本で初めてまとまった報告を教室の先代の教授であられる藤巻、川島らが行い、その後も継続して数多くの発表と論文掲載があります。特に、ゴールドスタンダードの治療となった各種ロッキングプレートを使用し、早期の社会復帰に役立っております。掌側ロッキングプレートは、スクリューの固定角度にある程度の自由度がある、Variable(Polyaxial) locking plateを用いたDSS (Double tiered subchondral support) 法という手術手技にいち早く注目し、現在手術に・研究に・最先端の開発を行なっています。日本橈骨遠位端骨折ガイドライン策定委員会にも、川崎、門馬医師(H14卒:昭和大学救急科)が選考され、今後国民の皆様の治療の礎となる仕事も行っています。

2.小児の肘周辺骨折

小児上腕骨顆上骨折は500例、外顆骨折は200例の実績をもち、豊富なデータがあります。頻度の最も高い顆上骨折は、フォルクマン拘縮など合併症のリスクも高いので、転位の著しいⅢ型とⅣは、腫脹が著しくなる前の受傷当日に緊急で整復し、ピンニング固定を原則としております。

3.小児の内反肘変形

上腕骨顆上骨折後に内反肘変形を生じる事があります。我々は、1973年から教室の故藤巻名誉教授発案の3次元矯正骨切り術の伝統を継承しております。日本で最も早くから行なわれたため症例数も全国屈指であり成績も良好であることから、現在までその基本的な術式の変更は行っておりません。手術時間は1時間以内で出血量は少量、2泊3日で退院していただいております。

4.舟状骨骨折及び偽関節

舟状骨骨折の新鮮例や遷延治癒例では、骨折部に圧迫がかかるスクリュー固定を小皮切で行っています。しかし、本骨折は見逃されやすく、偽関節に陥りやすいのも事実です。偽関節の中でも、難治例(骨壊死が疑われる、近位部型、経過の長いもの、既往の手術失敗例)には血管柄付き骨移植術を行い、現在までに100症例に達し、その骨癒合率は難治性であるにもかかわらず90%を凌駕しています。それ以外の通常の偽関節やスポーツ選手などでは、最近は鏡視下に偽関節手術・骨移植も行い、早期のスポーツ復帰に寄与し、可動域もすこぶる良好です。

5.キーンベック病

キーンベック病(月状骨壊死)にはStageⅢAまでは通常は橈骨短縮骨切り術を、時に血管柄付き骨移植術を行い、ⅢB以上では基本的には摘出と腱球移植を行っています。

6.TFCC損傷

手関節尺側部痛の原因となることが多い三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷には、富田と池田を中心に鏡視下手術が行われ、縫合術や再建術が行われています。スポーツ選手が多く、痛みの消失によりスポーツ復帰が可能となる患者が多く、大変喜ばれています。

7.肘関節鏡手術

上腕骨外上顆炎、離断整骨軟骨炎、肘関節拘縮などの手術も最近は、渡邉、富田を中心に鏡視下に行っています。スポーツへの早期復帰が可能となる症例も多いのが特徴です。

8.人工肘関節置換術、人工指関節置換術

近年関節リウマチの薬物治療が急速に進歩し、同時に外科的な手法も進歩しました。特に上肢の人工関節の割合が増え、人工肘関節は手術適応が厳しいにもかかわらず120件を超えています。教室の稲垣が留学先の米国Mayo clinicで研究によって得たデータや手術見学で得た知識と技術を生かし、良好な成績が得られており、その手術には海外や他大学からの見学医師も多く、また患者様は全国各地から来院されております。人工肘関節に関しては、表面置換型であるKudo型と一体型(Hinge型)のMayoタイプを症例により使い分けていますが、原則として侵襲の少ない表面置換型を使っています。リウマチとは異なり変形性関節症(ブシャール・へバーデン関節症に対しては、表面置換型人工PIP関節置換術が行われることが多いです。

9.関節リウマチによる手関節・指関節変形

リウマチ手関節炎では伸筋腱断裂を来すことが多いので、腱移行術や移植術と併用して、Sauve-Kapandji法やDarrah法、部分橈骨手根関節固定術等を症例に応じて行います。手の尺側変形には、MP関節に一体型であるSwansonのシリコンインプラントによる人工関節置換術が行われます。

10.上腕骨遠位端骨折、肘頭骨折

高齢者に多い上腕骨通顆骨折や青壮年に多い上腕骨関節内粉砕骨折には、発売当初からMayo plateを使用し、内・外側の両側にプレートを設置する、double platingを基本に行ってきました。最近は橈骨遠位端骨折と同様にPolyaxial locking plateをこの上腕骨遠位にも使用しています。

11.神経外傷、絞扼性神経障害

腕神経叢損傷治療のパイオニアでいらっしゃられる原徹也顧問とした昭和大学では、現在末梢神経診を立花新新太郎教授(三宿病院院長)、中川種史講師(中川整形外科)が担当され、難症例の診断と治療にあたっています。日々の外傷による神経断裂には顕微鏡下に神経縫合を、症例の多い手根管症候群や肘部管症候群では、安全を第一に直視下に剥離術を心掛けています。

12.再接着、腱・神経・血管縫合、皮弁手術

救急センターから運ばれてくる指の切断、神経・腱・血管断裂、開放骨折には、川崎や前田を中心に顕微鏡視下に神経・血管を縫合しています。皮膚欠損に対しては、最近はVAC systemによる陰圧密封療法で初期治療を行い、後日遊離皮弁などで対処するようにしています。

14.デュプイトレン拘縮

これまでは重度のデュプイトレン拘縮によるひきつれに対して、病的手掌腱膜を切除、拘縮を除去、生じた皮膚欠損に対しては時に皮弁形成術で対処してきました。海外では以前から使用可能であったザイアペックス注射が昨年末に使用可能となり、注射による拘縮除去が行われるようになりました。低侵襲ではあるものの、合併症の報告もあることから、手外科専門医のみが使用可能で、慎重な治療が必要です。

15.エコー(超音波)

新しい治療器具の一つとして注目を集めているエコーは、外来診療、ブロック、治療に使用されています。当科では、麻酔科ともコラボしてセミナーの開催も予定しています。

16.リハビリ

整形外科の治療には手術のみではなく、術後のリハビリも重要であり、その部分を多くの作業療法士(ハンドセラピスト)の先生方が受け持っています。時に術前から係わり、術後早期にリハビリを開始します。

昭和大学病院(品川区旗の台)
診療日時:毎週木曜日。午後1時より。

曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 土曜日
午前 川崎
前田
稲垣 末梢神経診(立花、中川)      
午後   スポーツ肘(渡辺)   手外科診(川崎、前田、福島、平原、稲垣〈予約〉池田〈月一回〉)    
(2017年3月12日更新)