ご挨拶

昭和大学整形外科
科長 稲垣克記

 当講座には、大学医学部附属病院として臨床・教育・研究の3つの使命があります。この3つの使命について教室の特徴と展望をお話したいと思います。

 

 まず臨床は当科で最も重点をおいているところです。都内の中核となるばかりでなく、全国でもトップレベルの整形外科センターとなるべく診療レベル の向上に努めております。とりわけ当院は最も繊細で高いレベルの技術が要求される日本手外科学会認定専門基幹施設であるため、手・肘関節疾患はもとより運動器疾患の難治の“最後の砦”として最高レベルの診療を行うべく、都内だけでなく全国の公的施設・大学病院、さらには米国における最高峰の施設と緊密な連携の元、日夜最善の診療を心がけております。当科では総勢120名を超える整形外科医局員が都内近郊の学外研修基幹病院にて日夜診療にあたっており、救急医療、脊椎損傷、小児外傷、スポーツ障害、靭帯損傷、変形性関節症、半月板損傷、軟骨障害、関節リウマチ、上肢手・肘疾患、肩関節疾患、脊椎疾患、股・膝関節疾患、骨粗鬆症、骨壊死など各領域の専門家が多数そろっており、どの分野においても我が国最高レベルの診療をめざしています。毎年1000件以上の手術を行なっておりますが、過去5年間でこれらの手術は全て安全に行なわれ優れた成績が得られました。手・肘関節手術は入院手術では毎年300例以上行なっており大学病院・特定機能病院ならではの質の高い手術と症例数を誇ります。股関節・膝関節の人工関節手術も毎年200例以上行なっておりますが、当科では比較的若い年齢層に行なう寛骨臼回転骨切り術RAO(Rotational Acetabular Osteotomy)や骨盤骨切り術も歴史があり多くの症例の長期成績データがあるのが特徴です。2015年4月から豊根知明教授が就任されました。脊椎手術、特に最も難治とされる腰椎変性側弯や後彎の変形矯正手術では第一人者の先生です。今後は、これら脊椎手術も増えてゆく事でしょう。これからは二人で力を合わせて臨床のレベルをより高いものに上げて行きたいと思います。また、これらを基盤にした最新の技術や考え方を基に微小血管や血流動態、神経支配、バイオメカニクス、再生医療を考慮した大学病院ならではの先進医療を推進し今まで難治とされていた疾患も治療が可能になるように挑戦していきたいと考えております。

 

 教育に関しましては、医学部学生、大学院生はもとより研修医に至るまで、我が国をリードする人材の育成に努めております。建学以来受け継がれてきた「至誠一貫」の精神のもと、米国最高峰の大学病院Mayo Clinicの教育理念と同様、常に国民や一人一人の患者の立場に立って考えることのできるヒューマニティーあふれる医師の教育を基本に、日進月歩の医学の知識(Science)と技術 (Art)を十分身につける医師を育成したいと考えます。昭和大学医学部整形外科学講座は3年後には開講90周年を迎えます。全国80大学のなかで9番目に開講した歴史と伝統ある整形外科学教室であり、本講座ならではの独自の卒前・卒後臨床研修ができるようにプログラムが工夫されております。昭和大学は変革する医学教育のなかで近年の高等医学教育, 殊に横断的学部連携教育、体系的チーム医療学習のパイオニアであり、全国や海外から毎年見学者が訪れる医学教育の拠点機関でもあります。本講座でも昨年はMayo ClinicとニューヨークにあるHSS (Hospital for Special Surgery), 今年はハーバード大学、スイスからも手術見学者が訪れました。海外や他大学から手術見学希望医師や整形外科研修医師が多い事も当講座の特徴のひとつです。進路に関しては、一般には研修後には大学院に進んで研究を行い、その後海外留学をして国際的視野を持った医師になっていただきたいと思いますが、本人の意思を十分尊重し、個々の医師が自らの能力を最大限発揮できる教育を心がけています。

 

 最後に大学病院が他の病院と大きく異なる点の1つに研究があります。現在我が国の医学はips細胞による再生医学をはじめ急速に進歩していますが、未だ十分な診断と治療ができない疾患が多数存在することも事実です。それを克服するためには研究が必要であり、研究で得られた成果を新しい診断や治療法に応用するのが大学における先進医療です。次世代を支える若い医師の育成を目指し、研究テーマを設け、研究をしながら、臨床と実践を行っています。幸い本学には多くの優れた人材がそろっており、基礎的な研究から臨床をふまえたトランスレーショナルな研究が可能です。基礎的な研究としては、破骨細胞の分化誘導形成機序、RANKLを礎とした骨に関する再生医療や培養細胞の移植など整形外科疾患の中心的な問題について分子生物学や細胞生物学を駆使して最新の研究に取り組んでおります。

 

 このように、医学の進歩により多くの福音がもたらされている中で一番大切なことは、自然経過を含め運動器の疾病をよく理解する事です。手術はあくまでこの人間のもつすばらしい自然治癒力を少しだけ手助けする手段にすぎません。日常生活のなかにスポーツや運動療法を取り入れ、健康を維持するということがとても重要なことといえるでしょう。当科では、現在可能な最高の医療を患者さまに提供すると同時に明日の医療をも創造していきたいと考えています。

昭和大学医学部整形外科学講座
主任教授 稲垣克記
(2015.5.7 revised)

(2017年3月6日更新)