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四肢外傷
グループ
について

私達は突然の不幸に見舞われた外傷患者さん達の治療を行なっております。外傷と一言に言っても、骨折、神経・血管損傷、靭帯損傷、腱損傷、切断、偽関節(骨折後の骨癒合が得られていない状態)、など軽症から重症まで非常に幅が広く、その治療には高度な知識、技術、そして経験が必要となります。重度四肢外傷に関しては外傷班が中心となって治療を行いますが、一般的な外傷治療に関してはどの班の医師も治療する能力を携えておりますので、適宜連携しながら治療を行います。

当院の特徴としては、大学病院の本拠地ということもあり、各部位の専門家が在籍しているため、部位や受傷形態により各々の得意分野を活かしながら治療を行います。

外傷の治療指針は実は単純です。
怪我する直前の状態を目指して治療を行う。それだけです。
しかし、治療開始時期や全身状態、社会的背景など、怪我の程度もさることながら、置かれている環境まで含めると千差万別な為、外傷治療は時に困難で複雑なものになります。

私達、外傷整形外科医は持てる技術・知識・経験を元に最良と考えられる治療を提案しますが、患者さんにとっての最良と私達にとっての最良に差があることがあります。状況により適宜御本人、御家族と相談させていただき、より良い解決策を検討します。

治療を行うと決まった時点で私達と患者さんはチームになります。
仮に手術が100点だったとしても治療成績が100点とは限らないのが外傷治療の難しいところです。リハビリ含め、御本人の努力なしに良い結果は得られません。私達にできることは手術を含めても治療の全課程の半分程度と考えております。ご本人も積極的にリハビリを行なっていただくことで残りの半分が補填され、治療が奏功します。リハビリは専門のスタッフが担当に付き治療いたしますが、リハビリ以外の時間も自主的に練習していただくようお願い致します。
特に受傷後、術後は痛みを伴いますが、良い結果を目指して努力を続けていただきたいと思います。ご家族の方々も治療へのご理解、サポートを宜しくお願い致します。

また、治療には合併症はつきものです。傷が化膿したり、動きの制限、痛み、しびれなどが残ったり、固定した骨が崩れたり、インプラントが壊れたりすることもあります。合併症が最小限となるよう努めますが、一定の確率では起こり得ます。起こった際には複数回の手術や入院期間が長期化する場合があり、ご本人にとって辛いと感じることも多々あると思います。我々もできる限りのサポートを致しますので、ご本人、ご家族もご協力お願い致します。

当院では受診、救急搬送された患者さん達だけでなく、近隣の病院やクリニックの先生方から御紹介もいただいております。適宜連携をとって、手術から術後のリハビリまで行っております。またリハビリで長期の入院が必要となる場合、リハビリを継続していただける病院へ転院して治療を継続していただくことが多々あります。ベッドには限りがありますので、次の外傷患者さん達の為にもご協力お願い致します。多くの場合リハビリ病院を退院した後のフォローアップは当院で行っています。安心してリハビリに励んでいただけたらと思います。

代表的な治療

Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折)

30代男性 交通事故にて受傷。専門治療を要する為、遠方より御紹介いただきました。

受傷時X線単純写真 正面・側面

Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) 受傷時X線単純写真 正面・側面

CT

Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) CT
Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) CT
Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) CT

術後 6か月

Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) 術後 6か月

CT

Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) 術後 6か月 CT
Floating elbow(上腕骨遠位端骨折、尺骨近位端骨折) 術後 6か月 CT

骨折部は問題なく癒合し、ご本人のリハビリの甲斐もあり日常生活では問題なく使える肘関節になりました。

骨折だけでなく、軟部組織(皮膚、皮下組織、筋肉など)の欠損や、主要血管損傷を合併している症例も搬送されます。専門的な治療を行わなければ、切断に至るような外傷もあります。

50代男性 交通外傷 右脛骨近位端開放骨折 膝窩動脈損傷

受傷時:脛骨近位端開放骨折、膝窩動脈損傷

受傷時:脛骨近位端開放骨折、膝窩動脈損傷

遊離広背筋皮弁 + Masquelet

遊離広背筋皮弁 + Masquelet
御本人も乗り越えていただき患肢を温存し、歩行能力を再獲得することができました。

感染後の洗浄や不良組織の切除、遊離皮弁などの複合組織移植による軟部組織再建、骨移植など多数の手術を行いました。御本人も乗り越えていただき患肢を温存し、歩行能力を再獲得することができました。

(文責:筒井 完明)

代表的な業績

  • Kuroda T, Okano I, Sawada T, et al. Recurrent femoral shaft fractures in a child with gnathodiaphyseal dysplasia: a case report. BMC Musculoskelet Disord. 2019

  • Okano I, Midorikawa Y, Kushima N, et al. Penetrating Anorectal Injury Caused by a Wild Boar Attack: A Case Report. Wilderness Environ Med. 2018

  • Nishi M, Okano I, Sawada T, et al. Chronic Kirschsteiniothelia infection superimposed on a pre-existing non-infectious bursitis of the ankle: the first case report of human infection. BMC Infect Dis. 2018

  • Okano I, Sawada T, Kushima N, et al. Treatment With Helical Blade Cephalomedullary Nail for Two-Part Basicervical Proximal Femoral Fracture in Elderly Patients Geriatr Orthop Surg Rehabil. 2017